形成外科
形成外科
形成外科は、ケガ・やけどの治療はもとより、生まれながらの異常(変形、欠損)、病気などで生じた整容面の不満足に対して、外科的に見た目や機能を改善(治療)する診療科です。体表面を中心に、頭から足の先まで全身を治療対象としています。一般的な治療としては、怪我や熱傷(やけど)、皮膚の瘢痕(はんこん)やケロイドの治療、眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)、生まれつきのあざ、皮膚や皮下の腫瘍切除、顔面骨折や傷の治療などがあります。頭蓋骨、顔、あごの骨の変形矯正手術や、口唇口蓋裂、多指症、小耳症などの生まれつきの異常に対する形成手術、乳がんで切除された乳房の再建手術などは、形成外科の特徴的な治療といえます。
老若男女を問わず、全身の見た目や機能の問題を対象として、様々な治療を行っております。体表の見た目などでお悩みや困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。
※当院で対応困難な症状につきましては、形成外科の専門医院と連携をとって随時ご紹介をさせていただきます。
笑顔で再び社会生活に復帰される患者様の姿を見ることが、わたしたちの最高の喜びです。体表のことでお悩みや困りごとがありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる病気で、体中のどこにでもできる良性の皮下腫瘍です。皮膚の下に皮膚と良く似た袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢と皮脂が、その袋の中にたまってしまう病気です。たまった角質や皮脂は袋の外には出られず、どんどんたまっていきますので、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。体中どこにでも出来ることがあります。大きさは様々で、やや盛り上がった数mmから数cmの半球状のしこり(腫瘍)で、しばしば中央に黒点状の開口部があり、強く圧迫したり皮膚が破けるとすると、悪臭のする白い膿に似た物質が排出されることがあります内容物を出そうとして圧迫すると、袋が破れて周辺の組織内に散らばり慢性化してしまうこともありますので、内容物を無理に排出することは避けて早めに受診してください。
皮下に発生する腫瘍の中では最も多くみられる良性の腫瘍です。皮下組織にみられる浅在性脂肪腫と、筋膜下、筋肉内、筋肉間にみられる深在性脂肪腫があります。20歳以下には発症することはまれで40~50歳代に多くみられます。女性や肥満の方に多いといわれています。背部、肩、頸部(くび)などに現れることが多く、上腕、お尻、大腿など四肢にもみられることがあります。痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして認められます。大きさは数ミリ程度の小さなものから直径が10センチ以上に及ぶものまで様々です。治療は手術による脂肪腫の摘出で、再発することはまれです。
ほくろは良性腫瘍の一種で、表皮にメラニン色素を生成するメラノサイトが集まり、黒色斑になります。隆起したもの、平らなもの、毛が生えているものなど様々です。生まれつき皮膚の広範に色素性母斑がみとめられるものは、巨大色素性母斑と呼ばれます。
一般的ないぼは足の裏に多く、免疫力低下により粘膜がウイルスに感染して生じるといわれています。顔や首などに出現する老人性のいぼ(老人性ゆうぜい)から足の裏にできるいぼ(尋常性ゆうぜい)まで種類も様々です。治療は電気やレーザーで全体を焼き取る方法や、メスなどを使用してくり抜く方法が一般的です。
巻き爪は、爪が横方向に曲がり爪の下の皮膚をつかむように巻いている状態をいいます。陥入爪は爪の両端から爪が皮膚に食い込むことで炎症や腫れ、疼痛が生じます。傷が化膿し、肉芽腫(にくげしゅ)という赤いできものが出来てしまうこともあります。巻き爪と陥入爪が合併して起こることも少なくありません。
予防には正しく爪を切ることが有効です。食い込んでいる爪を斜めにカットすると、爪が伸びるときに再び食い込むため、爪の角を残してカット(スクエアカット)することをお勧めします。また、靴の選択や足の衛生管理などフットケアも大切です。腫れる前や痛む前に矯正治療をお勧めしておりますが、すでに腫れてしまって早期治療を望まれる場合や、爪矯正などの保存的治療が無効な場合には手術をお勧めします。
※症例
血管腫とは、血管の細胞が異常に増殖する病気です。血管はバームクーヘンのような層状の構造をしており、内側の層は「血管内皮」と呼ばれます。血管腫は、この血管内皮の細胞が異常に増殖することで発生します。
※症例
耳垂は耳たぶのことで、耳たぶが何らかの理由で裂けてしまった状態を耳垂裂と呼びます。先天的な場合もありますが、ピアスが引っかかったり、重いピアスをつけ続けて穴が広がり裂けてしまうことが多く、外傷による場合もあります。治療では裂けた皮膚を切除し、正常な形に戻します。
先天性耳瘻孔(せんてんせいじろうこう)は、お母さんのおなかの中で赤ちゃんの耳が作られるときに、誤って残ってしまった皮膚の名残です。多くの場合、耳の前や耳の上の付け根にできますが、他の場所にできることもあります。深さは人によって異なりますが、多くの方は耳の穴に向かって長く伸びています。押すと、臭い内容物が出ることがあり、腫れや痛み、膿が出ることもあります。
眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)は、上まぶたの皮膚が緩むことで生じる加齢現象の一つです。眼を開いたときに上まぶたが正常の位置よりも下がり、上の視野が狭く感じたり、外見が悪く(眠そうな印象)なったりします。まぶたを上げようとするため、まゆ毛の位置が高くなり、額(ひたい)のしわが目立ったり、頭痛や肩こりの原因になったりすることもあります。
眼瞼下垂症は手術で症状の改善が期待できます。まぶたの皮膚を二重(ふたえ)の位置で切開し、眼瞼挙筋腱膜(がんけんきょきんけんまく)を緩んだ分だけ短くする眼瞼挙筋前転法、あるいは眉毛の下から余剰な皮膚を切除する眼瞼下垂手術が一般的です。
熱傷(やけど)は日常生活で多い外傷です。熱湯やアイロン・暖房器具・蒸気の出る電化製品など、日常生活にやけどの危険性は多く潜んでいます。やけどは、皮膚に高温の液体や固体が一定時間以上接することで生じるもので、火炎や爆発などでも生じる場合もあります。また、比較的低い温度(44~60度)でも長時間接触することで生じる低温熱傷もあります。この他、薬品(酸、アルカリ溶液など)による化学熱傷や電流(家庭電源、落雷など)による電撃傷などもあります。
原因としては、やかんやポットのお湯、てんぷら油、お茶やコーヒーなど高温液体によるものや、アイロンやストーブなど熱性固体の接触が多く見られます。幼児の熱傷では炊飯器やポットの水蒸気の噴出口や、ヒーターの吹き出し口に触れてしまうケースが増えています。
やけどをしたら、流水で15~30分程度しっかり冷却することが大切です。衣服を着た状態の場合は、衣服の上から冷やしましょう。水ぶくれがある場合は出来るだけ破らないようにしましょう。放置すると水ぶくれが破れて細菌感染することもありますので早めの受診をお勧めします。
やけど・擦り傷・切り傷などの外傷、手術後やにきびなどで傷あとが残ることがあります。深い傷であるほど目立つ傷あとになりますが、浅い傷でも広範囲に及べば整容的に問題となることがあります。
傷あとにはいくつかの種類があります。傷が通常の経過で治ったにも関わらず、残った傷あとを「成熟瘢痕」といいます。「肥厚性瘢痕」は深い傷のあとにできることが多く、傷ができてしばらくはミミズばれのように盛り上がります。お腹など手術後の傷あとなどが肥厚性瘢痕になりやすいといわれています。この他に、傷跡の範囲を超えて盛り上がりが生じてしまうケロイドがあります。
治療には瘢痕を切除して縫合する外科的治療や、傷の形状を整えることで目立たなくするレーザー治療、色味を改善する外用治療・光治療、傷あとに特殊なメイクアップを施すメイクアップセラピーなどがあります。
わきの下にはアポクリン腺とエクリン腺という2種類の汗腺(汗を出す器官)があり、わきがとは、アポクリン汗腺からの汗の成分と、皮膚表面の細菌が作用して特有の臭いを放つことをいいます。アポクリン汗腺は、ホルモンの分泌が活発になる思春期から活動をはじめるため、このころに症状を訴える方が多いようです。治療は不規則な日常生活や喫煙習慣など、生活習慣を見直すことから始まります。市販の制汗剤の使用や腋毛の処理なども一定の効果が得られることがあります。また、ボツリヌス毒素注射や塩化アルミニウム溶液の外用、レーザーによる脱毛法やイオン導入法、マイクロ波を利用した治療法もあります。
手術治療の適応は、においが強い場合です。アポクリン腺が分布している層を皮膚の裏側から切除する方法が最もよく行われています。切除には特殊な機器(クアドラカット剪除吸引器、超音波メス、脂肪吸引器など)を用いる方法もあります。
褥瘡(床ずれ)は、在宅や施設入所中で長期間寝たきりを余儀なくされている方や、車椅子生活をされている方などに多くみられます。体の限定した部位が長時間圧迫されることにより、その部位の血流がなくなり、組織が損傷されて起こります。大きな骨と床に挟まれる部位にできやすく、仙骨部(お尻の正中部)、坐骨部(お尻の骨が突出する部位)、大転子部(太ももの骨が突出する部位)、腸骨稜部(骨盤前部の骨が突出する部位)、足底(踵)などが好発部位です。
急性期褥瘡(発症から1週間から3週間までの間)は、皮膚の赤みの持続、浮腫、水ぶくれ、表皮の剥がれといった症状が現れます。重症化すると浸出液が多くなり、細菌による化膿や組織が白くなったり黒くなったり(壊死)します。褥瘡の管理が難しい場合には、一時的に入院治療を行い、治癒に至らなくても管理しやすい状態までの改善を目指す治療もあります。
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